何のために働くかではなく、誰に向けて働くか

こんばんは。大宮です。
先日、魚屋さんと肉屋さんにそれぞれ話を聞く機会がありました。どちらも繁盛店なのでお客さんに話しかけられたりするのは迷惑なのかと思っていたら、むしろ客との会話が一番の喜びだというのです。少し意外な気がしました。

彼らが客との会話を重視するのは、「おいしかったよ」「がんばってるね」と励まされたいとか美人客との雑談でリフレッシュしたい、といった理由ではありません。「こないだ買ったあの魚はまずかった」とか「ハーブ入りソーセージを復活させて」といった意見や要望を聞くと、「次はこうしよう」という参考になるというのです。

もしも客からフィードバックがないと、勘と売上データだけで仕入れや加工をすることになってしまい、客の心に強く響くような商品を打ち出せなくなるのでしょう。

この2人に限らず、やる気のある職業人は「高品質でお値打ち感のある商品やサービスを生み出してヒットさせる」という一点に集中している人が多いと思います。成功確率、人事評価、報酬などは二の次。とにかく目の前の仕事に夢中で取り組むのです。

ただし、好きな仕事であるからこそ自己満足になってしまう恐れも高まります。どんなに素晴らしい商品を開発しても、その場そのときのお客さんの生活や嗜好に合っていないと無駄になってしまうでしょう。

例えば、上記の魚屋さんは蒲郡と豊橋(ともに愛知県の都市です)で働いているのですが、ニシ(三河湾で獲れるサザエみたいな貝)は蒲郡で売れて豊橋では売れず、ナガラミ(外洋に面した砂地にいる巻貝)は豊橋で人気で蒲郡では見向きもされないとのこと。ほぼ隣の都市なのに食文化が微妙に違うのですね……。

僕もときどきお客さんの声に接することがあります。メールをもらったりWEB記事ではコメントがついたり、たまには編集部宛にお手紙をもらったり。僕の文章を読む前から誹謗中傷することを決めていたような内容はスルーさせてもらいますが、ちゃんと読んだ上での冷静なご意見は本当にありがたく感じています。

接客業や営業職とは違い、文筆業はアウトプット中に編集者や読者の反応を見ることはできません。一人でパソコンに向かってキーボードを叩くだけです。言葉を扱う仕事なので、文章の中で自慢をしたり私憤を晴らす誘惑にも駆られます。というか、僕はときどき誘惑に負けて失敗します。職権乱用は自己満足より悪いですね。

だからこそ、編集者や読者からのフィードバックが貴重なのです。褒められたら励みになり叱られたら凹みますが、本質はそこにはありません。自分の文章をちゃんと読んで感想を抱いた人(客)がいる、という確かめこそが本質です。

一つひとつの仕事に生身のお客さんがいるのだと体験的にわかっていれば、その客がどのような価値観とセンスの持ち主で、どんな文章ならば喜んでもらえそうなのかを具体的に考えることできます。まったくわからないと、努力する方向すらつかめないのです。あの魚屋さんも、客の顔を思い浮かべながら仕入れたりさばいたりしているのではないでしょうか。

何のために働くのかと問われたら、僕は「2ヶ月後の生活費を稼ぐため」と即答してしまいそうです。でも、誰に向けていま仕事をしているのかを己に問えば、自己満足より顧客満足を優先して働き続けることができると感じています。
by jikkenkun2006 | 2013-11-30 20:15 | 週末コラム | Trackback | Comments(4)
トラックバックURL : http://syokulife.exblog.jp/tb/20994353
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by AK at 2013-11-30 19:51 x
働くことが日々の糧を得る目的のためであるならば、お客さんに自分の生み出すものやサービスがどのように受け止められているか、意識して働くしかないですよね。いいものをアウトプットし続ければ必ずお客さんはポジティブに反応してくれると思います。どんな職業にも通じるんだろうな、と思います。
Commented by jikkenkun2006 at 2013-12-01 20:29
>AKさん
コメントありがとうございます。お客さんとのいい関係、いいサイクルを目指したいですよね。そこに仕事のありがたみがあるような気がします。
Commented by ちこ at 2013-12-01 21:31 x
いつも読ませて戴いています。
大宮さん、おっしゃる通りですね。
私は社内向かいの仕事なので、反響が見えにくいのですが、それでもちゃんと見ていて下さる方がいて、何かの弾みにそれがわかるととても励みになります。
最終的には自分のために仕事しているのですが、それだけではつまらないですものね
Commented by jikkenkun2006 at 2013-12-03 22:27
>ちこさん
コメントありがとうございます。読んでいただき、励みになります!


<< 坦々鍋を食べました カボチャとベーコンのスープを食... >>