「鬼畜」にならないためにできる2つのこと

こんばんは。大宮です。
たいていの凶悪事件は他人事としてスルーする僕ですが、秋葉原の通り魔事件にはショックを受けました。
新聞記事を読むだけでどうにも気持ちが暗くなります。
容疑者の行為はまさに鬼畜の所業。
しかし、彼の境遇と、ネット掲示板に書き込んだとされる文章に、共感のようなものを覚えてしまうのです。

「友達できない 不細工に人権なし 彼女できない」
「どーせおれなんて、中年になっても6畳1間のボロアパートで一人暮らしでしょう」
「スポーツカーに女を乗せてる奴が居た 事故ればいいのに」

もちろん、どんなことがあっても通り魔は許されません。彼は法的な手続きによる罰を受けるべきだと思います。
しかし、彼と同じような孤独で過酷な状況に置かれたら、僕だって何をするかわからない。

社会に残された僕たちは、自分や他人が鬼畜にならないために、努力しなければなりません。
今のところ、歩行者天国の中止、監視カメラの設置、ネットの監視、ダガーナイフの規制、などの「対策」が検討されているようです。
日本の行政担当者はアホなのでしょうか。
「予防努力をしてますよ」というポーズにしか思えません。
今回の事件は、無差別の無理心中のようなもの。やろうと思えば、通勤ラッシュ時の駅構内で暴れればいいだけでしょう。監視や規制には全く意味がありません。むしろ、怒りや憎しみを抑圧・増幅させる結果になると思います。

では、どうすればいいのでしょうか。
容疑者が不満を爆発させたきっかけは、「俺が必要だから、じゃなくて、人が足りないから」という殺伐とした派遣労働の現場にあることはほぼ明らかです。
貧困者へのサポートをきちんと行いつつ、労働者を調整可能な原材料のように扱うことを規制すべきだと思います。

以前、仕事で大手派遣会社の社長に会ったとき、同じような意見をぶつけてみました。
すると、こんな反論を返されました。

「そんなことをやったら、日本企業は国際競争で負けて倒産して、失業者だらけになりますよ」

世界の流れに取り残されないためには、安価で使い捨てできる労働力は「必要悪」だというのです。企業経営者の倫理観と想像力なんてこんな程度なのでしょうか。
日本だって世界の一部です。
僕たちが選挙などで政治に働きかけるように、日本も国際社会に働きかけるべきでしょう。
むき出しのグローバル競争を所与のものとして考えるのはおかしいと思います。

行政にも企業にも期待できないならば、政治家の出番です。
次の選挙からは、「国際競争」「規制緩和」「抵抗勢力」といった勇ましいだけのキャッチフレーズには二度とだまされません。
国内外の情勢を冷静に見極める知性と、強者の横暴を許さない感性、そして実行力を持っていそうな人に投票しようと思います。

でも、実際には社会はどんどんエゲつない方向に進んでいくかもしれません。
アメリカのような超格差社会になったら嫌だなあ……。

そんな現実でも鬼畜化しないための方法が、3年前に書籍化されていることを最近になって知りました。
本田透『電波男』(三才ブックス)です。
「オタクの逆ギレ本」みたいな形で評判になった本ですが、じっくり読むと愛と説得力に満ちていることがわかります。

秋葉原事件の容疑者より悲惨な境遇で生きてきた著者は、三次元(現実社会)で鬼畜になるのではなく二次元で「萌え」ることによって、怒りや憎しみを昇華させたそうです。
少し長めですが、引用します。

<もはや、恋愛だけでなく、結婚も出産も、俺たちにとっては生涯無縁なものになりつつある。俺はもう35歳。たぶん結婚なんか一生できないだろう。俺は家庭というものを一生持てなかった。幼い頃に父に捨てられ、母も俺が十代の頃に死んだ。ただ形だけ残っていた家も、地震で潰れて焼けた。仕事も失い、一文無しになった。その上、キモメンでオタクでニートなので、女に見向きもされなかった。あまりにも長い間、キモメン差別を受けてきたために、もう三次元の女には愛情を感じることができない。三次元の女には、憎しみしか感じられない。人を愛したり、愛されたり、ということが、まったくできない。どういうものなのか分からないし、想像もできない。
 しかし、そんな俺でも、二次元なら恋愛だってできるし、結婚もできる。子供も育てられるのだ。誰かを愛したい、愛されたい、それなのに俺にはどうしようもない、という苦しみを、二次元が癒やしてくれる。俺の三次元における35年の人生よりも、みさき先輩との一瞬の脳内での出会いのほうが、俺にとっては大切な思い出であり、忘れることができない体験なのだ。
 俺はみさき先輩と一緒に、二次元を生きているのだ!>

ここで出てくる「みさき先輩」とは、パソコンゲームのキャラクターです。
アニメやゲームのキャラに恋すると「オタク」と言われがちですが、非オタクである僕も実は同じようなことをしています。
宮沢りえやペネロペ・クルスとの恋愛を妄想したり、学生時代に大好きだった女性を懐かしく思い出したり。現実的ではないという点では二次元とほとんど同じですよね。

いや、マンガやアニメにも女神たちがいたぞ。
しずかちゃん、メーテル、ナウシカ……。三次元の女性との交渉がほとんどなかった高校時代までは、彼女たちとの純愛を夢想していたじゃないか。隠すな、俺!
受験偏差値だけを心の支えにしていたのではない。彼女たちの優しい言葉(妄想だけど)にずいぶん救われたではないか。この恩知らずの軟弱者! セイラさんにひっぱたかれろ!

……興奮して、本田さん風に告白してしまいました。
こうやって書くだけでもなんだかスッキリ。
そういえば文章表現も二次元世界ですよね。萌えの力、偉大なり。

僕は今、幸運なことに人間関係にも仕事環境にも恵まれています。
でも、欲求不満がないわけではありません。
一部は三次元で実現できるかもしれませんが、すべてを叶えることは絶対無理ですよね。
世界の美女8人と同時に付き合うとか、ノーベル物理学賞と文学賞の同時獲得とか。
無理矢理に欲望を追求しようとして、大切な人間関係を失ってしまったこともあります。
朗らかに前向きに三次元を生きるためには、二次元でも夢を深めるべきだったのだ!

「投票」と「空想」。
世知辛くなっていく社会で鬼畜化しないために、僕たち個人が持っている強力な手段だと確信します。
by jikkenkun2006 | 2008-06-15 23:57 | 週末コラム | Trackback | Comments(7)
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Commented by おつまみ at 2008-06-17 00:05 x
非正社員が、使い捨ての労働力のように社会が扱わなくなるようにするには、組織の仕組みや、考え方をどのように変えていったらいいのでしょうか・・。頭の中でシュミレーションしてみたら、確かに非正社員を安価で使うことは、会社単位で見たらとても効率的に思えます。また、以前、ワークシェアリングという言葉が広まりましたよね。(今は消えてしまいましたが)結局、能力のない人たちは、立場が悪くなっても仕方がない、という考えに落ち着いてしまうのです。
こんな自分も思いきり非正社員ですがー。
本当に実感するのは、もっと若いときに、自分の適性をつかみ、それに向かって進んでいればよかったと思います。
でも、それってとてもムズカシイ・・。フツウの人ならなおさら。
Commented at 2008-06-17 20:56 x
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Commented at 2008-06-17 20:57 x
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Commented by jikkenkun2006 at 2008-06-17 23:50
>おつまみさん
コメントありがとうございます。どんな人でも「文化的な生活」を送れるという憲法がこの国にはあった気がします。為政者に思い出してほしいです。

>Meetさん
「下らない乱文」なんかじゃありませんよ。切実な感情を的確に表現されていると思いました。ホント、「他人事」には思えないですよね……。

Commented at 2008-06-20 20:50 x
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Commented by jikkenkun2006 at 2008-06-21 11:02
>W田さん
問題提起をありがとうございます! その通りですね。僕は、格差自体には賛成ですが、貧困(「貧乏」ではなく)が生じるほどの格差はいけないと思います。というか憲法違反ですよね。貧困撲滅ために何ができるか、を真面目に考えて実行できる政治家を真面目に選びたいと思っています。
Commented at 2008-06-22 16:07 x
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